金門県の渉外町にある馬山は、対岸の鉄観嶼から約2,100メートルほどの距離にある。また干潮時には、わずか1,800メートルと、金門と厦门(シァメン)の最も近い点でもある。かつては敵の海上動向を観測するための要塞として用いられ、「世界一の防波堤」として知られた。観測所に進入すると、軍用地道を通る。その道には砲台など軍事施設が整備されている。好天の日には福建の鳴鶴山がはっきりと見えるため、昔の軍事的記憶を呼び起こし、現在では人気の観光地となっている。
馬山放送所は、馬山観測所に向かう道脇に位置する。この放送所は、対岸に向け発信された心理戦放送の最前線を担っていた。その立地は金門の北方にある「北山放送所」と同様である。地元では「放送所」と呼ばれることも多い。故・歌手のテレサ・テンは、この馬山放送所から対岸への2回の放送を実施した。時代変迁とともに心理戦放送は必要とされなくなり、現在ではポップスや台湾の曲がたまに流れているだけになったという。