福勝パジャマ店の初代オーナー、許福勝(フーシェン)氏は、彰化県芳苑(ファンユアン)町からわずか2万円を持って台北へ上り、1966年に福勝パジャマ店を創業しました。当時の萬華(バンホア)に密集していた家庭工場型の縫製業と同様に、夜市での販売経験を持つ許氏が営業を担当し、奥様が工場の生産を担い、夫婦で家族経営を成り立たせました。
創業当初からパジャマを主力商品に据え、バリエーションが少ない分、安定した品質と数量を確保。萬華アパレル商圈が最盛期だった頃は、福勝にパジャマを仕入れに来る車列が西園路一段を埋め尽くし、遠くからもトラックの長い列が見えたほどでした。
現在もパジャマは台湾の工場で製造され、品質が保たれています。商品は男女・子供向けまで揃い、レトロな味わいが特徴。パジャマには昔ながらの「ネクタイ襟(サクラカラー)」が残っており、新しいスタイルに慣れない高齢者の方々がわざわざ注文するほどです。二代目の許政偉(シェンジェンウェイ)氏が近年経営を引き継ぎ、ネット販売を始め、ホテルやSPA・マッサージ業界などサービス業の顧客開拓にも力を入れています。バスローブや浴衣をオーダーメイドでデザインし、快適性に優れたルームウェアも高評価を得て、多くのホテルからパジャマブランドとして採用されています。
ネット通販の隆盛やプライスレスチャネルによる客離れの影響で、福勝パジャマ店はかつほどの賑わいはなくなりましたが、それでも定期的にルームウェアを買いに来る忠実な顧客がおり、福勝の品質が時流を超えて支持されていることを示しています。