吊山古道、別名「無名塚登山步道」、全長約2,700メートル。友人とゆったり歩けば、身体を鍛えるだけでなく、木立に覆われた渓谷や連なる緑の尾根の美しさを味わい、かつての面影を想うことができる。春が訪れると、絶壁に花が一斉に咲き誇り、かつての文人をして「吊山春景」と名付けさせた絶景が広がる。
この道の起源は明治31(1898)年、川で砂金が発見されたことに遡る。探鉱者たちは瑞芳の水美坪山から上流に辿り、双渓の牡丹坑山まで金鉱脈を突き止めた。鉱夫が群がり、鉱石運搬のための軽便鉄道や鉱山事務所、医務室などが整備された。ルートは、瑞芳・九份と双渓・牡丹を結ぶ地元民にとっての交易・労働の要となり、道は旅人でにぎわった。そこからは、無名塚の伝説など、切なくもロマンチックな山の逸話が生まれた。
金子碑古道とは異なり、吊山の道は日陰が少ない。日よけ対策を忘れずに。