「北港町」はかつて日本の植民地時代、砂糖や樟脳、木材の輸送・取引、および日本主導による日月湖水力発電プロジェクトによる人的・物的資源の流入に支えられ、繁栄を遂げました。1958年には、当時トップの林業企業「陳長興業」の孫海会長が南投丹大森林の伐採権を取得。交通の便と地の利を最大限に活用し、北港町近郊に製材工場を建設し、国内外向けの木材生産を手がけることになりました。最も繁栄した時期には2000を超える雇用を生み、北港町に第2の黄金期をもたらし、「小台北(ショータイベイ)」とも呼ばれるに至りました。1970年代以降、政府の林業政策は再植林や地の整備・保全にシフトし、国内および国際市場向けの製材業は伐採禁止に伴って持続不可能となりました。多くの工場が閉鎖または再編を迎えた中、主に丸太原木を海外に輸出していた「陳長興業」も同様の運命を辿りました。その後、製材業が衰退した現代では、北港町のこれらの施設は放置されたままとなっています。
観光・レクリエーションの促進と地域の林業発展をより深く理解してもらうため、この施設はかつて非常に重視されていた工業遺産から「北港林業展示館(ペイコーン・フォレスト・アート・ギャラリー)」へと変質しました。展示館は2008年6月に開館し、台湾の林業の歴史的繁栄に触れることのできる場となっています。展示館には、20世紀初頭に建築された木造構造施設が備えられ、1950年代には高度な設計として評価された構造が残されています。改装には「新旧重ね合わせ」というコンセプトを採用し、古い構造物は再利用され、林業創造館の一部として復元展示されるとともに、上部には新たな木造フレームが組み入れられています。このデザインにより、新しい素材と古い素材が同じ空間内で動的かつ視覚的に複雑に絡み合い、ユニークな芸術的な体験と、歴史と技術革新の進化を映し出す展示構成となっています。展示館を訪れた観光客は、1950年代の製材工場の様子を体験することができたり、さまざまな木材のディスプレイを観賞したり、展示館に入った瞬間に香り豊かな木材のアロマに包まれた「フィトンチドを浴びる森」の体験を楽しむことができます。この展示館への訪問を通じて、台湾の林業発展についてより深い理解を得ることができるでしょう。