三芝区と石門区の境目に位置する麟山鼻(りんさんび)は、天然の地質景観を有し、映画『言えない秘密』のロケ地となった。劇中、主人公がヒロインを家まで護送するシーンは、麟山鼻遊憩区のサイクリングロードで撮影された。多くの観光客がこの美しい遊歩道を訪れ、道行く先の絶景に心を奪われる。特に、風がコバンギリの林を揺らし、銀色の波が風に踊る瞬間は格別だ。レストラン経営をテーマにしたバラエティ番組『来吧!営業中』も麟山鼻をメイン舞台に選び、古い民家を活き活きとしたレストランに生まれ変わらせ、ドラマファンが聖地巡礼に訪れる新たな名所を生み出した。
角張った風稜石(ふうりょうせき)は、麟山鼻遊歩道を代表する地形景観である。節理の発達した安山岩が、長年の波の浸食と、砂を含んだ風の研磨を受けて平らな風食面を形成し、風向きの変化に伴い異なる角度で削られ、鋭い稜線を持つ独特の形を生み出す。巨大で風変わりな造形を持つ風稜石に立ち止まって眺めていると、まるで風と石の会話が聞こえてくるようだ。
80万年前、大屯火山群の竹子火山が噴火し、熱い熔岩が二筋の流れとなって海へと流れ込み、台湾最北端の美しい「鼻尖(びせん)」、つまり富貴角と対をなす海岬・麟山鼻を形成した。
風稜石と並び、麟山鼻の宝石ともいえる藻礁(そうしょう)も見逃せない特別な地形である。一部の藻類は安定した岩に付着して生育する必要があり、所狭しと並ぶ安山岩は最適の場を提供する。藻類の生死を繰り返し、世代交代が重なることで、岩表面に薄い石灰質の層を成し、藻礁が形成される。現在では台湾北岸に限られる貴重な景観だ。
麟山鼻に足を踏み入れれば、険しい岩岸地形と多彩な潮間帯生態を目の当たりにし、美しい白い砂を手に取ることもできる。潮位を事前に調べ、装備を整えれば、潮干狩りの楽しみも満喫できる。