勺勺客—黄土大漠陝西菜館
陝北藍田県の郷民は、農閑期には故郷を離れ各地で生計を立てていた。その際、包丁と2本のへらを担いで、どこへ行っても「仕出し料理」を引き受け、ついでに一食を得て、新しい話題を仕入れていた。「勺勺客(しゃくしゃくかく)」はそうして生まれた言葉で、「料理のできる人」を指す。
「勺勺客」の扉をくぐれば、まると窯洞(ようどう)に入ったよう。百衲(ひゃくのう)や窗花(そうか)、農民画、秦腔(しんきょう)や山歌が、私たちを遥か西北へと誘う。炕頭(こうとう)の牛・羊料理、大漠辺塞の菜餚と飲み物、古都西安の仿古菜(こどうさい)は、まさに黄土大地に触れた感覚を与えてくれる。名物の泡饃(ほうもう)は、牛骨・骨髄・肉・筋と数十種の香辛料で丹念に炊き上げたスープに、香り豊かな鴨血や季節の野菜、牛腱を煮込み、格別の濃厚な旨味が広がる……。
陝西は古シルクロードの起点であり、外来香辛料の集散地で、胡漢が混住。西安は12王朝の都として、各時代の宮廷菜や伝統小吃が今に受け継がれる。オーナーは中医学を極め、香辛料を巧みに使い、塹辛・酸辣・香嗆の複合味を基調としながら、「一菜一味(一皿一風味)」にこだわる。その姿勢が評価され、2007年『餐飓評鑑』で三つ星優良レストランに選ばれた。